FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
「邪空間の中心は東京の新宿あたりにあるんだけど……都心部は停電してるって。車も動かなくて、さっきは電線が人を襲っていたって。警察も自衛隊も出動できない、パニック状態……だ、そうよ」

「うわあ……ますます現実味がねえ……」
 
蒼馬は引きつりながら笑った。
 
まだ『第三次世界大戦が勃発した』という方が信じられそうな話だ。

「あ、来たわ」
 
紅葉が振り返った先には、猛スピードで走ってくる白いワンボックス車が一台。

「移動しながら詳しく話すわ。乗って」
 
6人の前に停まった車に、紅葉が助手席に、蓮が後方にサッと乗り込んだ。次に真吏、李苑が続く。



「なあ、セイ……」
 
乗り込む直前、蒼馬が聖を振り返る。

「うん?」

「やるしか……ねえんだよな?」
 
その顔には、不安がにじみ出ていた。
 
いつも明るい蒼馬のこんな顔は初めてだ。
 
聖も不安だった。いくら修行をしたと言っても、たかだか一ヶ月の訓練でそう技術が追いつくはずもない。

そして、神の力を放出するだけの器がない、という大きな不安材料がある。
 
もう少し時間をかければ可能かもしれない。
 
しかし現段階では、技一つ放つだけで体に大きな負担がかかる。
 
そんな状態で、あの妖魔と戦わなくてはならない。
 
しかも、“命”を落とす危険性のある戦い。
 
不安になるのも当然だ。

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