FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
暗闇の中、スポットライトに照らされたかのようにパッと明るく浮かび上がっていたのは、白いベッドに横たわる沙都美だった。

「こんなことも……見なくて済んだのに」
 
その手に握られていた細い剣が、沙都美の心臓目掛けて振り落とされた。

「沙都美!」
 
体が動かない。
 
ファリアを止める事が出来ない。
 
剣は鈍い音とともに、その心臓を貫いた。淡いピンク色の病衣が、徐々に鮮血に染まっていく。

「沙都美いいぃっ!!!」

後悔と絶望の入り混じった聖の叫びに、ファリアは満足そうに微笑む。

「これだけでは終わらないんだよ」

「な……に?」

「お前の選んだ道は、これだけでは終わらないんだ。良く見るがいい、これがお前の“運命”だ!」
 
ザアッと風が吹き抜けると、そこはもう別世界だった。
 
どこまでも続く草原、花畑。空に浮かぶ山とそこから流れ落ちる透き通る水の流れ。優しい風が吹き抜ける、そこは天界──。
 
ざわり、と悪寒がした。
 
これは、何度も夢で見たものと同じ場所。突如として辺りは炎に囲まれる。山は崩れ、森は焼かれる。

「ティージェ……悪い、失敗した……」
 
持国天ラディウスの最期の言葉。

「ラディウス!」
 
血にまみれた彼は、それきり口を開く事はなかった。
 
水天レイガンも、摩利支天ファリアも、増長天シーファーも、弁財天アナリスも、尊い命をヴァジュラに奪われる。
 
そして、吉祥天ラクシュミーも例外ではなく、彼らと同じに……。

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