FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
今、目の前で起きた事が現実のような気がしない。自分には関係のない、どこか遠くのものを眺めている──そんな、錯覚。
 
ゆっくりと膝をつき、ラクシュミーの頬に手を伸ばす。

今起こったことが信じられなくとも、心のどこかで解っているのかもしれない。その手は微かに震えていた。
 
ラクシュミーの白く美しい肌が、深紅の血で染め上げられていく。それが美しいとさえ感じる程、ティージェの精神は壊れかけていた。

「ラクシュ……」
 
名を呼んでも返事が返らない。こんなことは今までなかった。

「……ラクシュ?」
 
表情が崩れる。今のラクシュミーの状態を、痛いほどに解ってしまっている。

「ラクシュ──!!!」
 
声だけが空しく響く。
 
失ってしまった。一番失くしたくないものを、目の前で。



「そう、愛する者を失うのが、お前の“運命”」

ファリアはスッとラクシュミーを指差した。
 
いや……ラクシュミーではない。そこに倒れていたのは李苑だった。

「李、苑……?」

“聖”は、ティージェと同じように、倒れている者の頬に触れた。
 
微かに残っていたぬくもりが、徐々に失われていく。それで過去の夢から覚めた聖がハッとして顔を上げると、そこは高層ビルの立ち並ぶ大都市、東京だった。
 
周りに倒れているのはラディウス達ではなく、蒼馬達。みんな同じように血に塗れている。
 
徐々に震えだす身体。

(また?)
 
こんな風に。失ってしまうというのか。
 
やっと心を許せる友人達に出会えた。なのに。

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