FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
「お前が見るのは、“絶望”の夢」
 
ファリアはアスファルトの上に倒れる聖を見て、薄く笑った。
 
その後、力が抜けたかのように座り込み、しばらく肩を上下させていた。彼女も聖たちと同じ“人間”だ。長い間力を行使すれば、身体に馴染みきらない“神の力”で体力を消耗してしまう。

息を整えながら、眠る聖の顔を覗き込む。青白い顔だ。夢の中でも幸せになることは出来ない。

「……苦しいの、だろうな……」
 
自分でも良く解らないことを口走った。
 
ファリアはその言葉の意味も考えずに……やがて視線を走らせ、蓮で止めた。

「次は、お前、だ……」
 
フラフラと連の前へと歩き出した時。
 
グイッと腕を引っ張られた。

「!?」
 
驚いて振り返ると、李苑が立っていた。

「貴様……まさか、この中で正気を保っていられるのか……?」
 
ファリアはその事実に驚愕しながらも、すぐに李苑の手を振り払った。
 
李苑は苦しそうに肩を上下に揺らしながらも、顔を上げてファリアを見つめた。

「聖くんを……元に、戻して下さい……み、んなも、ここから、出して、下さい……」
 
小さな弱々しい声。
 
抵抗する力はないと判断したファリアは、ニヤリと笑った。

「そのような状態で他人の心配か。殊勝なことだ」
 
と、剣を李苑の頬にピタリと当てた。
 
それでも李苑は恐れる事なく、ファリアから目を逸らさなかった。

「もう、止めてください」
 
小さな声だが、しっかりと、そう言う。

「何?」

「傷つけるのは……傷つくのは、止めて、ください……」

「……何を言っている」
 
ファリアは李苑の言葉が理解できなかった。だが、何故か胸の奥がチクリと痛んだ。
 
何とも言えない、不快な痛み。

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