FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
ぶつかる度に生まれる爆風が、両者を弾き飛ばした。

「──!」
 
宙に舞ったファリアの眼前に広がったのは、真っ赤な世界。
 
その中にキラリと光るものが見えた。
 
鋭い刃物──そして飛び散る真っ赤な血、狂ったような叫び声……。

「母さん!!」
 
その幻に向かって手を伸ばす。

「やめて……やめて母さん!!」
 
止めなくては。止めなくては──!
 
しかし気持ちとは裏腹に場面は進んでいく。血塗れで倒れたのは他でもない、少女の父親。包丁を手にし、叫んでいるのは──母親。少女の目の前でそれは起こった。

「いやああああ!!」
 
顔を覆い、泣き叫ぶ。

(だから?)
 
そうだ。だからなのだ、ヴァジュラの下へ行ったのは。

(独りになったから)
 
世間の白い目が嫌で、怖くて、耐えられなくて。
 
そこにやってきた、甘い誘惑──。

 
忘れさせてやろう。

何もかも。

だから、ここにおいで──。


「お前は……」
 
今の幻影が何故か真吏にも見えた。ファリアの力が不安定なせいなのか、過去の出来事を共有してしまった。
 
あまりにも悲壮な真実。
 
真吏はかける言葉を失った。


  
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