FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
顔を上げると、蒼馬が十夜とともに近くのビルの上から聖たちを見下ろしていた。

「早くしろってば!」

「……ごめん」
 
小さく頷くと、そっと李苑を抱き上げた。

青白い李苑の顔。そこに血まみれの彼女の顔が重なった。

肩を抱く手に、力が入る。



圭一郎の住む和泉神社は、都心から僅かに離れたところに位置していた。

邪空間の影響は少なからず受けているようだが、術者達の待避所として機能しているためか、他の場所よりは清浄な空気に包まれていた。

何人もの負傷者が神社の境内にひしめいている。

その中に紅葉たちも入っていった。


「紅葉さん!」
 
すぐに圭一郎が駆けつけてくる。

「圭一郎さん、蓮が……!」

「分かっています。こちらに!」
 
圭一郎はすぐに自宅の方へ案内してくれた。そこも負傷者でいっぱいだ。どうやら妖魔と直接戦った者達のようだ。

 
野戦病院のような凄まじい光景に目を奪われていると、一人の女性がやってきた。

「待たせたわね、飛高さん」

「真秀さん」

「蓮くんね。すぐに手当てします、そこに寝かせて」
 
< 164 / 280 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop