FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
みんなが信じられないような面持ちだ。
戸惑っているうちに女は間近まで歩いてきて、止まった。
「久しぶりだ」
気の強そうな瞳をし、ゆるくウェーブのかかった長い黒髪の女が微笑んだ。そして、斜め後ろに立つ男たちは。
「阿修羅王<あしゅらおう>…! それに……夜叉王<やしゃおう>、羅刹、王<らせつおう>……何で、ここに……」
それは、天界の神。
二千年前、天界にいた頃に一緒に過ごしてきた仲間達だ。
一瞬、助けに来てくれたのだろうか、という考えが過ぎった。しかし……阿修羅王の紅い唇の端を上げ、不敵に笑うその姿は、とてもそうとは思えなかった。
「人間の割には良くやる。今まで結界を張っていられた力量に敬意を払い、私達が“今だけは”張っておいてやる」
阿修羅王は天を仰ぎながら言った。
「神は……人間界に干渉してはならない、んじゃなかったか?」
神と人とは同じ世界に生きていない。人間界と天界とでは次元が違うのだ。それは個々が持つ力も同じ。神がその力を人間界で振るえば、この地は破壊し尽されてしまうだろう。
それでももし天界の神が人間界に干渉することがあるとすれば、それはこの世界──宇宙が滅びるときだ。
それを解っていながら、何故。聖の問いに、阿修羅王はクッと笑う。
「私はもう、神などではない。あんなところ、捨ててきた」
「──!?」
驚きの表情を隠せないでいると、阿修羅王は右手を掲げ、大気中から剣を引き抜いた。そして、その切っ先を聖に向ける。
「私はただ、約束を果たしに来ただけだ」
「約束……?」
「そう。二千年前のな」
戸惑っているうちに女は間近まで歩いてきて、止まった。
「久しぶりだ」
気の強そうな瞳をし、ゆるくウェーブのかかった長い黒髪の女が微笑んだ。そして、斜め後ろに立つ男たちは。
「阿修羅王<あしゅらおう>…! それに……夜叉王<やしゃおう>、羅刹、王<らせつおう>……何で、ここに……」
それは、天界の神。
二千年前、天界にいた頃に一緒に過ごしてきた仲間達だ。
一瞬、助けに来てくれたのだろうか、という考えが過ぎった。しかし……阿修羅王の紅い唇の端を上げ、不敵に笑うその姿は、とてもそうとは思えなかった。
「人間の割には良くやる。今まで結界を張っていられた力量に敬意を払い、私達が“今だけは”張っておいてやる」
阿修羅王は天を仰ぎながら言った。
「神は……人間界に干渉してはならない、んじゃなかったか?」
神と人とは同じ世界に生きていない。人間界と天界とでは次元が違うのだ。それは個々が持つ力も同じ。神がその力を人間界で振るえば、この地は破壊し尽されてしまうだろう。
それでももし天界の神が人間界に干渉することがあるとすれば、それはこの世界──宇宙が滅びるときだ。
それを解っていながら、何故。聖の問いに、阿修羅王はクッと笑う。
「私はもう、神などではない。あんなところ、捨ててきた」
「──!?」
驚きの表情を隠せないでいると、阿修羅王は右手を掲げ、大気中から剣を引き抜いた。そして、その切っ先を聖に向ける。
「私はただ、約束を果たしに来ただけだ」
「約束……?」
「そう。二千年前のな」