FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
「何のために……ここに来たの?」
 
体を震わせながら紅葉は訊いた。
 
今まで殺気立って襲い掛かってきた者達が、今は雰囲気をガラリと変え、自分達の心配までしている。そのことへの疑問。

「ひとつは、阿修羅王の願いを叶えるため。もうひとつは、私達の願いを叶える為……」

「どういうことですか?」
 
十夜の治療を終えた李苑が、立ち上がりながら訊く。
 
その問いにはジャクラが答えた。

「言っただろう? お前達の運命を変えてやる、と。俺たちが干渉することで、もしかしたらこの戦いを終わらせられるんじゃないか、って思ったんだ。ヴァジュラと戦う前に完全に力を取り戻させようとしたんだが……。結局、同じ運命を辿っているわけだ……」
 
ジャクラは悔しそうに唇を噛んだ。

「だから今、決闘を?」
 
今度は夜叉王が静かに頷く。

 
確かに、彼らと戦う事で神であった頃の力を取り戻すことは出来た。だが、それ以上にヴァジュラも力を溜めているということだ。
 
神と闇に生きる者。
 
同じ運命を共にする敵同士、互いの力は均衡させなければならないというのか。
 
これでは、何をしても同じ道を辿ってしまう……。


「……蓮」

紅葉は小さく呟く。
 
同じ運命を辿るというのなら、蒼馬の次に命を落とすのは、恐らく……。

紅葉の結界を支える手に力がこもる。




< 206 / 280 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop