FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
圭一郎がルームミラーを覗き込むと、蓮はドアに身を寄せて深い眠りに入っているようだった。紅葉は何を考えているのか、ボーッと暗い外を眺めている。

「……紅葉さん、総領になったこと、後悔していますか?」
 
ちょっぴり意地悪な質問をしてみる。

「いいえ」
 
返事は即答で返って来た。

「総領になったことは後悔していません。でも……」
 
先程までの威勢のよさはどこへ行ったのか。紅葉は力なく言った。

「いろいろあるんです、高校生には」

「はははは、異性関係ですか」

「──っ」
 
紅葉は言葉を詰まらせ、黙り込む。

「確かに、紅葉さんには男性とお付き合いすることが許されないでしょう。多感な時期だというのに……辛いところですね」

悪戯っぽい口調が、紅葉の神経を逆なでた。

「……圭一郎さん、それ以上言ったら貴方の息子、苛めますよ」

低い声で呟く。

「はははっ、いやいや、大いに苛めてやってください。そのくらいの方がウチの馬鹿息子にはいいんですよ」

「……もうっ、圭一郎さんは何を言っても動じないからつまんないわ」

「これでも貴女より三十年以上長く生きていますから」

「他の人達はすぐにあたしの口に負けちゃうのに」

「そうそう、それも総領に必要な要素ですね」

「……何だか悔しいわ」

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