FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
その声が聞こえたのかは分からない。

しかし、そう心の中で叫んだ直後、それは現れた。

暗雲の中から、ニュルリとうねるように。

2メートルばかりの身長に、足まで届きそうな長い黒髪。男とも女とも付かない容姿をした者が、漆黒の衣を風に靡かせながら、聖達の前にゆっくりと降りてきた。

姿を見ただけで──いや、邪空間から現れた時点で、すでに全身の肌にビリビリと邪気が突き刺さり、息をするのも苦しい位、心臓がバクバクと波打った。

「久しぶりだな……」

人間のものとは明らかに違う、地の底から響くような声。

「お前たちの顔も、もう見飽きた」
 
声は耳の中でザリザリと不快な音となる。皆、顔をしかめた。

「“運命”なぞ、私が変えてやる」
 
ヴァジュラの右手がスッと挙がる。
 
同時に、触手が地面から勢い良く引き抜かれ、踊り狂うように動き出した。そして、また光の速さで襲ってきた。

「自分の身は自分で護れ!」
 
ジャクラが叫ぶ。
 
叫ぶ前に、全員が自らの周りに結界を張っっていた。
 
ビシイッと激しい音をたて、次々と触手はそれに弾かれた。

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