FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
「聖……」
 
後ろから真吏の声がする。

「動くな。傷の治癒が遅れる」

「だけどっ……このまま、李苑までいなくなったら……!」

「いなくならないように、傷を治せ。ここは李苑の結界内だ。恐らく倍のスピードで完治するだろう」
 
その言葉に聖は、静かに地面に転がった。
 
確かに、こんな状態では護れるものも護れない。


『運命は変えられます』

 
そう、言っていた李苑。
 
まだ少しでも望みがあるのなら、信じて待つしかない。
 
無事で戻ってくることを。
 
何かある前に、自分の体が回復することを。




結界の外に出ると、向かってきていた触手が目の前でピタリと止まった。

「吉祥天……」
 
忌々しげにヴァジュラが呟く。

李苑は一歩、一歩前に進んでいき、ヴァジュラから数メートルしか離れていないところで止まった。
 
攻撃される気配はない。
 
やはり──ヴァジュラも“運命”の通りになるのを恐れているのだろう。

「……少し、休みませんか?」
 
ゆったりとした、おちついた口調。
 
だが、いつも微笑みが絶えなかった美しい顔は真顔だった。キュッと口元を結び、大きな瞳は鋭く輝いていた。

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