FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
「生憎、そのような時間はない。わざわざ殺されに来たか」

「いいえ。だって、貴方に私は殺せません」
 
きっぱりと言い放つ李苑に、ヴァジュラはますます表情を険しくした。

「私を殺したら、貴方の最も恐れる力が出現する。だから」

「戯言を」

「では試してみますか?」
 
李苑の後ろに控えていたジャクラが、剣を宙から引き抜き、李苑の首筋にピタリと当てた。

「私が消えたら──どうなるのか」

「馬鹿な! 神々は仲間をその手で葬るつもりか!」
 
ジャクラに向かってヴァジュラが叫ぶ。

「必要とあらば、な。俺は、そのためにここにいる」
 
最終手段として。
 
吉祥天ラクシュミーの魂を持つ者を葬り去る。それで運命が変わるなら──。

今すぐに李苑を殺すつもりはないが、これは阿修羅王、夜叉王とともに決めた、真実の計画である。
 
他の誰に殺されるのなら、自分の手で──と、その役割を引き受けたのもジャクラ自身だった。
 
まさか、その理由まで李苑が知っているとは知らなかったが。


「何が望みだ」

「休戦です」
 
ヴァジュラは少し目を細め、何か思案しているようだった。僅かな時間が流れる。

「……フン、まあいいだろう。私も少々疲れた。その提案、乗ってやろうではないか」
 
そう言い、ヴァジュラはゆっくりと空へ舞い上がり、邪空間の中に消えた。

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