FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
「大した度胸だ」
 
天界を破壊するほどの力を持つ者相手に、怯みもせず啖呵を切るとは。
 
ジャクラは感心した。
 
だが。
 
僅かに李苑が震えていたのに気付き、ゆっくりと剣を下ろした後、肩を抱いてやった。
 
神の生まれ変わりとはいえ、この少女はやはり人間として生まれ育った、普通の中学生なのだ。

こんな恐ろしい者を相手にすることなど、並みの精神力では無理な話。

「よくやった」
 
そう褒めてから、バッと後ろを振り返る。
 
──誰もいない。
 
ホッとして、更に肩を抱く手に力を込めようとしたが──またキョロキョロと辺りを見渡した。
 
長年のクセなのだろう。
 
ラクシュミーに手を出すと、決まって彼女の騎士が現れ、ボコボコにされるという、記憶のなせる業だ……。


「今のうちに皆さんを治療します」

「ああ、そうだな」
 
ジャクラは後ろ髪引かれる思いで肩から手を放した。
 
2人で結界内に戻ると、聖達は安堵して大きく息を吐いた。

「李苑、あまり無茶をするな」
 
真吏の叱責の声に、李苑は軽く微笑む。

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