FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
ジャクラの方に目をやると、彼は十夜を後ろから羽交い絞めにして押さえたところだった。もがく十夜からは、大量に血が流れ出している。

「──」
 
李苑は少しの間、迷った。

そして、聖と真吏に向き直る。

 
2人とも、誰かを犠牲にしてまで助かりたいとは思わないだろう。
 
一見冷酷に見えるけれども、実はいつも他人のことを考えている真吏。
 
そして、強そうに見えてどこか脆い、クールそうで情に厚い聖。

「……」
 
李苑は、必死に“夢”に取り込まれまいとする聖の、苦痛に歪んだ顔に手を伸ばした。
 
そっと頬に触れて、ただ、見つめる。
 
聖はその李苑の顔を、今にも意識が飛んでいきそうな中、必死に視界に留めた。

(李苑……?)
 
悲しそうな、辛そうな顔をしていた李苑は──やがて、大輪の華のような笑顔を咲かせた。

「──!」
 
聖は手を伸ばした。
 
しかしその笑顔は手の中からするりと、消えた。

(李苑!?)
 
目の前が真っ暗になる。

(どこだ……李苑!)
 
何も見えない。
 
何も聞こえない──。

(李苑!!)

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