FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
ビシッと亀裂の入る音がし、触手が一本、侵入してきた。慌ててジャクラはそれを切り裂いた。

「ジャクラ! もう、保ちません……!」

「──!」
 
迷っている暇はなかった。
 
少しでも犠牲者を少なくするには、もう、これしか方法がないのか……。
 
ジャクラは、ギュッと剣の柄を握り締めた。
 
そして、剣先を李苑に向ける。

李苑はふわりと穏やかな笑みを浮かべ、そっと目を閉じた。
 
これで皆が救われるのなら──。きっと自分も救われる。
 
しかし、心の奥底で、まったく別の感情が渦巻いていた。それが無意識の内に言葉になる。

「ごめんなさい……」
 
──と。

 

ガッ、と肩を掴まれた。
 
思っていた痛みと違うので、李苑は驚いて顔を上げた。

「え……」
 
後ろに追いやられ、少しよろける。
 
目の前に立ったのは、聖だった。

「何、してんだよっ……」
 
聖は李苑に剣を向けるジャクラを睨みつけた。

「お前……幻惑から出てきたのか?」
 
ジャクラも驚きの声を上げる。

「……十夜の幻惑は何度か喰らっている。もう、同じ手は喰わない……」
 
大きく肩を揺らしながら、聖は言う。

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