FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
襲い掛かる全ての触手がピタリ、と止まる。
 
それはまるで時間が止まってしまったかのようだった。
 
聖は、信じられない想いでその光景を見ていた。

「り、え……」
 
李苑の右手が、微かに挙がる。そこに短く変化した錫杖が現れた。
 
リィン。
 
静かに鈴が鳴いた後。
 
眩い白い光が当たり一面に一気に広がっていった。

(──!)
 
思わず顔を背け、目を瞑る。
 
 

どれくらい経ったのか。
 
何か、体に落ちてくるのを感じた。
 
そっと瞼を上げてみると……幾つもの白い華が、雪のようにふわり、ふわりと天から降ってきていた。
 
それが体に触れると、優しく傷を癒していくのだった。



「あああああっ!!」
 
突然、十夜の叫び声がした。
 
白い華を浴びた体から、ジュウジュウと煙が立っている。

「……浄化、しているのか……」
 
真吏が、静かに呟いた。

 
全員の傷が完全に癒された。
 
ただ、李苑だけは。
 
白い華をどんなにその身に受けようとも、目を開けることはなかった。

「李苑……」
 

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