FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
少し薬品の匂いのする白い壁の病室。僅かに開いた窓からはそよ風が吹き、ベージュのカーテンを揺らしている。
 
紅葉は視線をそのカーテンから、ベッドで眠り続ける少年へと転じた。
 
手術は成功したというが、目覚めるまでは楽観できない状態にある。事故から十日目。未だ、少年は眠り続けていた。
 
目覚めない少年のことも気がかりだったが、紅葉はそれ以上に、彼に憑いている“生霊”の方が気になっていた。

紅葉は持って生まれた“力”のため、そういった類のものが見えるのだ。
 
少年に憑いているのは、少し茶色がかったセミロングの髪の少女。事故に遭った時からずっと少年の傍にいるのだが……。
 
“生霊”とは、その名の通り、生きた人間が幽体を飛ばしているもの。

無意識のうちに体を離れてしまうというのは良く聞く話だが、この少女は自分の意思でここにいるようだ。しかもかなり弱っているように見える。きっと、本体の方が危険な状態なのだ。

「ねえ、どうしてこの子の傍にいるの?」
 
話しかけてみるが、少女は応えない。

「このままここにいると、あなた死んでしまうわよ?」

少女は哀しげな顔をするばかりで、紅葉の言葉には耳を傾けてはくれなかった。紅葉は軽くため息をつく。

「やっぱ、霊関係は駄目ね。苦手……」
 
やはりその手の専門家にみてもらった方がいいのだろうか……なんて思っていると、病室のドアをコンコンとノックする音が響いた。

「はーい?」
 
返事をすると、ドアを押し開けて蓮が入ってきた。

< 24 / 280 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop