FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
逃げながら、しかし確実に“気”をヴァジュラにぶつけていった。徐々にその体が削られていくのが分かる。そして、削られた分がすぐに回復しているのも分かった。
 
人々の負の感情を吸い上げる邪空間。
 
それを取り込んでいるヴァジュラは無敵だった。

逃げて、追いかけて。
 
傷つけて、元に戻って。
 
この戦いが、メビウスの輪のように永遠に続くかのように思えた。
 
 
徐々に重くなる身体。
 
一向に終わりが見えない戦い。
 
 
聖は、戦う意味を見失った。
 
仲間全員を失って。仇を討って、一人残ったとしても何の意味があるのか。
 
護りたいものを失って。
 
それでも生きることに意味はあるのだろうか?

(──解らない)
 
聖の足が止まる。
 
その目から溢れる、幾粒もの涙。

(誰か……教えてくれ……!)
 
 
ドンッ、という衝撃とともに、聖の体は上空に引き上げられた。
 
気が付いた時にはヴァジュラの白い手の中だった。

「捕まえたぞ」
 
目の前で不気味に歪むヴァジュラの顔。

「これでやっと、運命を終わらせることが出来る」
 
ヴァジュラのその言葉に、ハッと気が付く。

(運命……!)
 
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