FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
「こんにちはー。お見舞い来たよ」

「ああ、蓮。この子の素性、分かった?」

「うん、圭一郎おじさんが調べてくれた」

「そう、良かった。で、どこの子?」

「N市だった。名前は天野聖くん。俺と同じ年だって」

「……N市? 何でそんな遠くに住んでる子があんな山の中歩いてたわけ?」
 
N市から紅葉たちの住む町まではおそよ三十キロも離れていた。

「なんか、家出したみたい。警察に届け出てたらしいから」

「家出?」

「そう。なんか、嫌なことでもあったのかな。俺と同じ年なのに家出なんか……。きっと辛いことがあったんだよね。かわいそうだな……しかも交通事故で意識不明だし……」
 
だんだん声が低くなっていく蓮を見て、紅葉はギクリとする。

「蓮のせいじゃないのよ、落ち込まないで……」

「うわああっ、やっぱり俺のせいなのかあっ! 聖くんが飛び出してきた時に俺がちゃんと起きてたら気付いたかもしれないのに!」 

蓮は何かあるとすぐに自分のせいにするのだった。しかも騒ぎまくるから質が悪い。

「こらっ、静かにしなさいって。ここ病院なんだから」

「ああっ、何て俺は考えなしなんだっ、ごめん紅葉、殴ってくれ!」

「うるさいって言ってるでしょう、馬鹿!」
 
蓮に平手打ちをお見舞いしようと、手を振り上げると、また蓮が叫びだした。

「あーっっ! 紅葉!」

「今度は何よ!?」

「それそれっ……目、覚ました!」

「えっ?」
 
振り返ると、聖が目を開けていた。ぼんやりと、天井を眺めている。

「蓮っ、先生か看護師さん呼んできて!」

「はいっ」
 
蓮は勢い良く廊下に飛び出して行った。紅葉は聖の顔をしばらく眺めた後、話しかけてみた。


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