FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
スッと世界が変わる。
 
いつの間にか辺りは元通り、静や沙都美、他の患者たちの静かな話し声の聞こえる談話室に戻っていた。
 
しばらくは阿修羅王達の余韻に浸り、全員静かに佇んでいた。

「お兄ちゃん」
 
そこに、沙都美の声。

「そろそろ退けてあげたら?」
 
そう言われて、やっと蒼馬に乗ったままだったのを思い出した。

「ああ、ごめん」

「あいよ~」
 
2人で起き上がると、聖の視界に李苑の姿が映った。

『吉祥天に手を出そうと……』
 
阿修羅王の言葉を思い出し、胸の辺りがムカムカしだした。

「李苑」
 
仏頂面で名を呼ぶ。

「はい?」
 
対照的に、ニコニコ笑顔の李苑。

「ジャクラに襲われたのか」

「えっ……ええ、その……阿修羅王に助けていただきました」
 
少々笑顔は引きつったが、李苑は表情を崩さずに言った。それを聞いて、聖の顔はますます恐くなる。

「聖くん?」
 
そんな聖を見て、李苑の表情も曇る。
 
そのまま、2人はしばし見つめ合った。

そんな2人を見て、他メンバーの瞳がキラリと輝いた。──まるで何かを期待するかのように。

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