FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
「お顔にも傷が。せっかくの綺麗なお顔が……」

「……はい?」
 
顔の傷は蒼馬のおかげで出来たものだが。
 
確かに聖はとても綺麗な顔立ちをしていた。世間の人々は「かっこいい」だの「かわいい」だの言うだろう。

しかしあまり交友関係がなかったため、そんなことを面と向かって言う人間は周りにいなかった。
 
少女の言葉を不思議に思うことしか出来なかった聖は、

「何言ってんですか。あんたの方がよっぽど綺麗だけど」
 
今さっき思った感想をそのまま述べてみた。

「えっ、私がですか?」

「うん。かわいいと思うけど」
 
と、そこまで言ってしまってから。
 
(……何言ってんだ、俺は)
 
今の自分の台詞に少し後悔する。そして、素直にも頬を真っ赤に染める少女を見て、聖まで恥ずかしくなった。一緒に赤くなる。
 
しばらく気まずいまま2人で俯いていると、ピーン、と軽い音が聞こえてきた。その音に少女が顔を上げる。

「あっ、あのっ、今ケーキ焼いてたんですけれど……食べていってください!」

「えっ」

「是非そうしてください。怪我をさせてしまったお詫びに……」
 
あまりにも懸命な瞳に、思わず頷いてしまう。すると少女はパッと顔を輝かせて笑った。

(うわあっ……)
 
思わず顔を赤らめてしまうくらい、華やかな笑顔であった。

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