FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
「ちょっとお待ち下さい、お茶の準備してきますね」
 
少女は対面式のキッチンの向こうへと消える。その姿を見届けると、静かに息をついた。

(なんか、緊張した)
 
少し心臓がドキドキしている。
 
その心臓を落ち着けようと、ゆっくりと辺りを見渡した。
 
部屋中の窓は全て開け放たれ、そこから吹き込む柔らかい風に、白いレースのカーテンが踊っている。床や壁に置かれた観葉植物たちも、小さく葉を揺らしている。
 
そして、微風は甘い香りを聖のもとへ届ける。
 
カウンターの向こうでは、少女が楽しそうにお茶をカップに注いでいた。

 
優しい空間だ。
 
先程までの緊張がみるみる解れていく。
 
ふんわりとした優しさに包み込まれている。そんな感覚を覚えた。

(なんか、いいな、この感じ……)
 
懐かしい感じがする。
 
どこかでこんな経験をしたような……軽いデジャヴ。

「お待たせしました」
 
テーブルにケーキと紅茶が並べられる。

「お口に合えばよろしいんですけれど……もしかして甘い物はお嫌いでは……?」

「ああ、いえ、大丈夫です」

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