FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
甘い物はどちらかと言えば大好きである。

「いただきます」

ペコリと頭を下げて、ケーキを口に運んだ。ふんわりと、ほどよい甘さが口の中に広がる。
 
チラッと少女を見ると、真剣な瞳でこちらを見ていた。どうやらケーキの出来映えを気にしているらしい。

「すごく、おいしいです」
 
そう感想を言うと、少女はホッとしたように笑顔を見せた。

「良かった! あの、まだたくさんあるんです。良かったらお好きなだけ食べていってくださいね」

 

その言葉に甘えたわけではないのだが、直径15センチはあったシフォンケーキは、全て聖の胃の中に納まった。
 
ふと時計を見ると、一時になろうとしていた。

(あっ、紅葉たちもう帰ってるだろうな)
 
メモも残さずに来たから、心配をかけているかもしれない。

「ご馳走様でした。こんな時間までごめん」

「いいえ、こちらこそ……」
 
その時、少女の携帯のベルが鳴った。少女はカウンターに置いていた携帯を取る。

「はい、こんにちは、お久しぶりです。……え? はい、ちょっとお待ち下さい」
 
少女はくるりと振り向いた。

「あの、お名前、天野聖くんっていいませんか?」

「あ、はい、そうです」

「良かった、紅葉さんが探していたみたいです」

「紅葉が?」

「はい。……あ、紅葉さん、いらっしゃいます。今帰られるところですので……はい、失礼します」
 
やはり皆に心配をかけていたらしい。昨日の出来事もあるし、早く帰って安心させなければ。

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