FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
通話を終えた少女に礼を言い、玄関を出る。

「長くお引止めして申し訳ありませんでした」

「いや、こっちこそ……ええと、紫乃原さん?」
 
確か家の前の表札には、そう書いてあったはずだ。

「はい。紫乃原李苑<しのはら りえん>と申します。今度は皆さんとお越し下さい。またケーキ焼きますから」

「うん、ありがとう」

そう言って歩き出そうとすると。

「あのっ」
 
李苑に呼び止められた。

「あの……」
 
李苑はしばらく聖を見つめた後、何かを決心したように軽く頷いた。

「あの……妹さんが、聖くんの傍に……気づいて、いらっしゃいますか?」
 
李苑は聖の後方を見ていた。

「……妹?」
 
いるはずのない妹。記憶の片隅にもその姿は見当たらない。しかし、蒼馬や李苑は、聖には妹がいると言う。それが本当なら、どうして解らないのだろう。

「俺の傍に?」

「はい。ずっと悲しいお顔をされてます」

「俺が忘れているから?」

「いいえ、そうではなく……」
 
李苑は聖の後方にいるという妹に視線を向け、その言葉を聞き取る。

「聖くんのことを凄く心配しているんです。聖くんが傷ついているから。悲しんでいるから……」

「……俺、が?」
 
確かに傷ついたけど、悲しかったけど、それだけで妹を忘れてしまうのか?

「沙都美っていうのが……妹?」
 
蒼馬が言っていた名前は確かそうだった。

「はい」

「……」

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