FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
家出をした理由は、両親の不和。それに耐えられなかったから。その重い雰囲気に押しつぶされそうだったから。

(……違う)
 
何かがあったはずだ。押しつぶされずにいられた何かが。それが壊れてしまったから“逃げた”んだ。

(何かが)
 
そこまで考えると、また激しい頭痛に襲われた。

「聖くん!」
 
李苑の声が遠くから響いてくる。

「駄目です! 自分を許してください! 貴方は自分を責めすぎているんです!」

(……責める?)

「妹さんを助けられなかった、守れなかった自分を責めているんです。その重圧に潰されてしまうから、だから、記憶が抜けて……」

「どうしろって……。俺にどうしろっていうんだ」
 
聖にはもうどうしていいのか分からない。ただ、痛みの増す頭を抱えるだけ。
 
そんな聖の肩に、李苑はそっと触れる。

「許してください。貴方が責められることは何もないんです。聖くんにとって自分を許すということはとても辛いことだと思います。でも、妹さんはそれを望んでいます…」

「……沙都美が」
 
許すと言っているのか。

〝お兄ちゃんのせいじゃないんだよ”──と。

「沙都美……」

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