FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
彼女を守ることが自分を守ることだった。沙都美が明るく笑っていられるなら、自分も心を穏やかにしていられるから。だから守りたかった。
 
それが壊れる。それは支えを失うのと同じこと。
 
守りきれなかった、それはお前のせい──。そう、激しく自分を責めることになる。

「ごめん……守れなくて、ごめんっ……」
 
聖の目から涙が零れる。

「沙都美……ごめんな……」

「いいよ」
 
謝る聖に、優しい声が降ってくる。  

「お兄ちゃんはずっと苦しんできたんだから、もういいんだよ。自分のためだけに生きていたって」
 
目の前に沙都美の姿が見える。こんなに近くにいたのに、今まで気付いてやれなかったのか。聖の表情は崩れる。
 
そんな聖に、沙都美は穏やかな笑顔を見せてくれた。

「ごめんね、お兄ちゃん。私が、ちゃんと言えば良かったんだね」

「沙都美…?」

「私が……お父さんとお母さんのこと、解ってるから大丈夫だって……」

「え……」
 
聖は目を見開く。
 
沙都美は申し訳なさそうに笑う。

「知ってたけど……お兄ちゃんやお母さんが必死に隠しているの知ってたから……知らないフリしてたの。ううん……お兄ちゃんが嫌な事から護ってくれるって、甘えてたんだ。でも、だからお兄ちゃんにだけ負担かけちゃってたんだね。気付かなくて、ごめんね……」

< 58 / 280 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop