FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
「何なんだよっ……」
 
良く分からない苛立ちが募る。
 
以前はこんなこと一度も無かった。
 
この間紅葉たちの車に撥ねられた時だって、傷の治りは普通だった。

(ティージェが出てきてからだ……)
 
ファリアの生まれ変わりの少女を撃退するために、ティージェを受け入れてからだ。神を受け入れたから、人間ではなくなってしまったのか?
 
聖から醸し出されるピリピリした空気に、皆も重く、暗い表情を作る。

 


全員が黙り込んでいると、静寂の中に豪快な腹の虫が鳴り響いた。

「……はははっ、腹減った」
 
少し恥ずかしそうに笑いながら言ったのは蒼馬だった。
 
その声とともに、音を立てて“緊張”の二文字が崩れた。場の雰囲気が和む。

「ふっ……。緊張感のない奴だ」
 
と言って真吏が笑う。

「何だよ、しょうがねえじゃん。昨日から何も食ってねえもん」

「そうだよね。俺たち、ボーッとしてたもんね」
 
蓮もいつもの柔らかい笑顔を見せる。

「そうだよ。難しい顔してたって何か変わるわけじゃないし、とりあえず飯にしようぜ~! 腹減った~!」
 
< 96 / 280 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop