FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
「はいはい、今出来たところだから、皆運ぶの手伝って」

「はーい」
 
空気がだんだん明るくなっていく。暗い雰囲気を作ってしまった聖としては、とても有りがたい事だった。

(駄目だな、俺って)
 
自分の気持ちに精一杯で、他人の気持ちを配慮することが出来ない。こんなことでは駄目だと思う。
 
そんな風に自己嫌悪に陥っていると、李苑が話しかけてきた。

「でも、落ち込んでいる時に他人まで思いやるのは、とても難しいことだと思います」

「……え?」
 
驚いて李苑を見る。

(今の……口に出して言ったっけ?)

「えっ?」
 
今度は李苑が驚いて聖を見た。
 
それはまるで、聖が心の中で思っていることが聞こえているような反応だった。

「えっ……あの、聖くん、喋ってないんですか!?」

「ええ!?」
 
李苑のその言葉に、更に驚く。

「いや……喋ってないよ、たぶん……」

「でも、確かに聖くんの声が聞こえて……」
 
聖も混乱しているが、李苑は更に混乱していた。声に出していないものが耳に届くなどありえないのだから。

「…もしかして、皆さん、さっきから何も話していなかったのでしょうか。私、ずっと皆さんの声を聞いているのだと思っていましたけど……違うのでしょうか」

「……分かった。じゃあ、俺が今何か考えるから。聞こえたらそれを繰り返してみてくれ」

「は、はい……」

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