FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
過去に体験した事の無い現象に2人とも戸惑っていたが、今は驚くよりも真相を確かめる方が先だと思えた。だから聖と李苑は唇を引き結んで向かい合う。

(李苑、聞こえるか?)
 
聖は心の中で語りかけた。もちろん、口はしっかりと閉じている。それを見て、李苑は目を大きく見開いた。

「……李苑?」

「……」
 
黙ったままではあるが、彼女の反応を見る限り聞こえたようだった。

「聞こえた?」
 
聖が訊くと、李苑は恐る恐る頷いた。

「どうして……どうして急に、こんな……」

「もしかして、ラクシュの声、聞いたりしなかったか?」
 
聖もティージェの声を聞いてから身体に異常が出始めた。ならば、李苑もそうなのではないのか?

「ラクシュの? ええ、昨日ファリアが現れた時に、声が聞こえました。そうしたら何か身体が変になって……」

「じゃあ……あの植物がファリアの足に絡まったのは、李苑の力?」

「そのようです……」
 
思い返せば、植物がいきなり成長したのは李苑が叫んだ直後だった。

記憶の中に、ラクシュミーが植物と会話している姿がある。ならば李苑が植物を操れるのにも納得がいく。

(植物と会話が出来るから、人の心も分かるのかな……?)
 
そう思ったら。

「はい、ラクシュはテレパシストでしたから。故意に心を覗かないよう、気をつけていたようです」
 
また李苑は心の声を聞いてしまったらしい。そう言った後でハッとしたように聖を見た。

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