平凡太~ヘイボンタ~の恋
「宍戸係長には…?」


「言いました…。だけど、自分に責任はない、って。本当に自分の子かどうかもわかったもんじゃない、って…。それだけでした…」


宍戸係長の言い分もわからないわけじゃない。


人の恋路を邪魔するために情報を欲しがって宍戸係長に近づいた、栞。


軽はずみに抱かれて子供まで宿してしまった栞に、宍戸係長は突き放す事しかしなかった。


理解はできても許されない暴言に、ボクはやり場のない怒りを感じた。


「…っ…っ…!どうしよう…どうしよう…っ!」


「栞…」


「あたし、子供なんていらないッ!もう何もかもいらないッ!!」


泣き叫んでベッドに伏せる栞に、ボクは手を伸ばしてやれない。


“こんな子供”


そんな一言で授かった命を認めようとしない栞に嫌悪すら感じた。


「いらないッ!産まないッ!!」


愛のない子供。


栞の中の小さな命が…かわいそうだ。
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