平凡太~ヘイボンタ~の恋
どうしてこんなに違うんだろう。


あんなにも詞音ちゃんを大切に育てている一華先輩。


相手は誰であろうと自分の遺伝子を生き写した子を宿した、栞。


“こんな子、堕ろす”


そう言った栞。


女性はお腹の中で日一日と育っていく命を迎える日を心待ちにして。


小さな命を抱いた瞬間、母となって深い愛情を惜しむことなくその子に注ぐ。


簡単な事じゃないのはわかってる。


けれども、そうして築いていく母と子は。


愛=幸せ、で。


そうじゃなきゃ子は産まれながらにして孤独という死にも似た不幸を背負ってしまう。


そんな命の無駄は、あってはならない。


だからと言って安易に堕ろすという選択肢を選んでしまう栞は間違ってる、そう思えてならない。


半分は自分の遺伝子なのだから。


奇跡を越えて着床した命なのだから。


大切に育む事はできないのだろうか…。


ボクが考えたところでどうなるものじゃないって事くらい、わかってる。


決断を下すのは。


“母”である栞なのだから。
< 105 / 164 >

この作品をシェア

pagetop