平凡太~ヘイボンタ~の恋
翌日、仕事を休む旨係長に連絡して、栞のアパートへ向かった。


栞は固い表情のまま、ボクを家に迎えた。


「栞、大丈夫…?」


「ハイ。覚悟はできてます」


「じゃあ、行こうか」


黙って頷く栞を連れ、会社から遠く離れた産婦人科へ向かった。


待合室には大きなお腹を愛おしそうにさする“母”になる人達。


誰もが幸せそうで満たされていて。


そんな中で1人沈んだ栞は浮いていた。


「辻野さん。辻野 栞さん、診察室へどうぞ」


診察室へ呼ばれ尿検査のためかトイレへ行って、また診察室へ戻ったり。


ボクが呼ばれたのは20分も経たずしての時だった。
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