平凡太~ヘイボンタ~の恋
タクシーを拾おうと大通りに出ようとすると、栞えがボクの手を引いた。


「少し…歩かせてください…」


「うん」


初夏の風、高く澄んだ空。


何もかもボクらの気持ちとはちぐはぐで。


雨でも降れば栞は泣けるのに、そんな事をぼんやり考えた。


「子供って…」


「ん?」


「子供って、かわいいですか?」


「ボクにはよくわからないけど」


「一華先輩の子供と遊んであげたりしてるんですよ、ね…?」


「まぁ…時々…」


「自分の子でもないのに、かわいいと思いますか?」


「うん。かわいいよ。あの子の全てを守りたいって思わせられるくらい、この先の成長を見せてほしいと思わせられるくらい、あの子で…いっぱいになる」


「そう、ですか…」
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