平凡太~ヘイボンタ~の恋
「あー…。ソーイングセット、今日に限って忘れてきちゃったし、どーしよ…」


「あ、だったらボク!」


「え?」


「あ、えっと、ネクタイうまくつけらんなくて、どうしても曲がるんで、安全ピンで固定してたんです。コレ、使ってください」


「いいの?」


「それじゃマズイ、ですよね?」


「う、うん…。じゃ、ご好意に甘えてお借りします…」


差し出した安全ピンを使って、ボクに背を向け胸の開きを直す先輩の小さく華奢な肩が。


なんだかおかしくて笑えた。


「もう、佐藤くんっ!笑わないでっ」


「いや…。弁当箱間違えるし、ボタンはずれるし、意外と…」


「何?」


「…ヌケてるんですね?」


「もうっ!」


頬をふくらませて怒る先輩が先輩に見えなかった。
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