平凡太~ヘイボンタ~の恋
こんな日がいつか来るんだって、わかってた。


所詮ボクは『代理』でしかない。


詞音ちゃんは成長を続ける。


ボクが『友詞』似の別人だと気づく日も、そう遠くはないだろう。


今、別れを告げれば小さな胸は傷つく。


だけど少し大きくなった詞音ちゃんが“だまされた”と思う前に。


今、お別れをした方がいいんだろうな、と。


だからボクは…。


「今日はボク、これで帰ります」


「平太…くん…?」


「詞音ちゃんには直接言えないけれど…。楽しかった、って。愛してる、って。伝えていただけますか?」


「もう…ここには来てはくれない、の…?」


「詞音ちゃんの顔を見ると辛くなるから。こんな形でお別れは卑怯かもしれないけど、ボクにこれ以上の事はできそうにありません」


そう言ってボクは詞音ちゃんの寝ているベッドへ行って。


「詞音、ありがとう。愛してるよ」


と。


その一言とおでこにキスをして、一華先輩のアパートを出た。


外は雨。


ボクはその雨に別れを告げた。


『友詞』と。


一華先輩と詞音ちゃんに。


寂しさ、虚しさ、孤独。


初めて味わう心の寒さは。



ボクの夏の名前。
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