平凡太~ヘイボンタ~の恋
「あたし、嫌われちゃってるみたいね?」


苦笑いを作った一華先輩は、空になったグラスをボクの前に差し出した。


ボクがビールを注ぐと、一気に飲み干す。


なんか、変くない、か…?


“酔い潰れないように監視しててね?”と、小野寺主任に対する態度。


いつもなら気配り上手な一華先輩は各テーブルをまわってお酌して、飲み過ぎずにうまく立ち回るのに。


今日はボクの隣で思い詰めたように、空になっては注がれるビールを飲み干していく。


「一華先輩?」


「んっ?」


「何か、あったんですよ、ね?」


「うん…。平太くんになら話そっかな」


一華先輩はトロンとした目をボクに向けて、小さな口元を耳に寄せてくる。


「小野寺主任に告白されたの」


「こ、こくは…!」


「シーッ!!」


一華先輩の小さな手がボクの口を覆う。


周りに目を走らせ、誰も表情を変えてない事に安堵するボクと一華先輩。


「うまく断ったつもりだったんだけど、ね。どうやら伝わらなかったみたいで。押しの一手なの」


渋い表情を作って、またビールを飲み干した。
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