平凡太~ヘイボンタ~の恋
───プシュー


開くドアに押し流されるように、人混みと一緒に車外へ。


あとは会社に向かって、いちもくさんに小走りで急ぐ。


春の嵐のような強い風。


(雨、降るかな)


確か天気予報は午後から雨。


湿気で髪が広がるから、今日の彼女の髪はゆるカワにまとめた編み込み、かな。


ビルの谷間をくぐり、一際大きくそびえ立ってるホープ・フジイ商事。


この大手商社がボクの職場。


「「おはようございます」」


「おはよう」


受付嬢と挨拶を交わし、まだ人のまばらなエレベーターへ乗って、9階。


総務のフロアは、まだ人影も少ない。


出社にはまだまだ早いから。


それでもボクは、すぐに彼女の影を探す。
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