平凡太~ヘイボンタ~の恋
*影*
「一華先輩!先輩ってば待ってくださいよっ」


フラつきながらもどんどん先を歩く一華先輩を追う。


かなり酔ってるな…。


「一華先輩っ」


「ん?」


腕を掴むと、うつろな瞳をボクに向けた。


その目…いつもに増して色っぽいんですケド…。


「ごめんね、平太くん」


「ハイ、まさかのキスでボクの幸せ貯金、ゼロですよ」


「フフッ…。うまい事言うなぁ」


笑う一華先輩はどこか寂しげで儚げで。


さっきもらったキスは、やっぱり味のないモノだと確信する。


小野寺主任へのあてつけのキスで、意味なんて、ない。


ボクにだってキスの経験がないわけじゃない、浮かれる前にそれぐらいわかってた。


だから、なおの事知りたい。


誰でもいいはずのキスの相手をボクにしたワケを。
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