平凡太~ヘイボンタ~の恋
長い沈黙に一華先輩のアスファルトをたたくパンプスの音だけが、ボク達を現実に繋ぎ止める。


何を忘れたくないのか。


何に対しての涙なのか。


ボクにわかるはずもなく、ただ一華先輩の言葉を待った。


「あたし、ね。学生結婚したの」


「…え?」


「20歳の時。一生その人と添い遂げるって誓って、幸せな結婚をしたの」


結婚…?


一華先輩、が…?


「ビックリするよ、ね?フフッ…。あたし幸せで。何もかも光でいっぱいだった。翌年には子供を出産。その時に。大切な命を得たと同時に、かけがえのない人を失ったの」


意味がわからない。


命を得て、失った人…?
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