平凡太~ヘイボンタ~の恋
「赤ちゃんが産まれそうって“彼”に知らせたの。“彼”出産には絶対に立ち会いたいって、仕事場から急いでバイク走らせてきて、ね。事故に遭っちゃったんだぁ…。あっけなく、あの世へ逝ってしまったの」
一華先輩の旦那さんが…事故…?
かけがえのない人を失ったって…亡くなった旦那さん…?
「知らされたのは初めて自分と“彼”の子供を抱いた時。あたしね、あの子の産声覚えてないの。すっかり混乱しちゃって、自分の泣き叫んだ声しか記憶にないんだ」
「………」
「産後って事と、あまりのショックに“彼”の葬儀にも出られなかった。愛する人のお骨一つ拾えなかった。バカみたいに弱くて何もできなくて。あたしはね、あの子と死を選ぼうとしたの」
「一華…先輩…?」
「決めたらすごく清々しい気分になった。天国でまた、“彼”とあたしとあの子の3人で暮らせるんだ、って。また新しい形の家族になって愛し合える、そう思ったの」
「はい…」
「でもね、あの子がそうさせてはくれなかった。手をね、首にかけたの。力を込めようとしたらね、あの子…笑ったの」
「…笑った?」
「産まれてすぐの子供にはね、楽しいとか嬉しいとか、そんな感情はないんだけれど、表情に意味のない笑顔を見せる事があるんだぁ。その顔“彼”に重なったの。『生きろ』そう言われてるようだった」
「『生きろ』…」
一華先輩の旦那さんが…事故…?
かけがえのない人を失ったって…亡くなった旦那さん…?
「知らされたのは初めて自分と“彼”の子供を抱いた時。あたしね、あの子の産声覚えてないの。すっかり混乱しちゃって、自分の泣き叫んだ声しか記憶にないんだ」
「………」
「産後って事と、あまりのショックに“彼”の葬儀にも出られなかった。愛する人のお骨一つ拾えなかった。バカみたいに弱くて何もできなくて。あたしはね、あの子と死を選ぼうとしたの」
「一華…先輩…?」
「決めたらすごく清々しい気分になった。天国でまた、“彼”とあたしとあの子の3人で暮らせるんだ、って。また新しい形の家族になって愛し合える、そう思ったの」
「はい…」
「でもね、あの子がそうさせてはくれなかった。手をね、首にかけたの。力を込めようとしたらね、あの子…笑ったの」
「…笑った?」
「産まれてすぐの子供にはね、楽しいとか嬉しいとか、そんな感情はないんだけれど、表情に意味のない笑顔を見せる事があるんだぁ。その顔“彼”に重なったの。『生きろ』そう言われてるようだった」
「『生きろ』…」