平凡太~ヘイボンタ~の恋
迎えた朝は静かだった。


虚しさしか残らなかったのは、きっと。


きっと一華先輩も同じはず。


ベッドで背を向けた一華先輩の背中にキスを残し、服を身につけ部屋を出る。


「…ありがとう、友詞…」


小さな声はドアの軋む音にかき消された。


なんて苦しいんだろう。


なんて切ないんだろう。


なんて。


悲しいんだろう。


一華先輩の過去、抱き合った今。


一華先輩はずっとボクに亡くなった旦那さんを重ねていた。


ボクを見てたんじゃない、見ていたのは友詞さんの“影”。


それでもいいと思えた。


ボクは一華先輩のためなら。


『友詞』になる、よ。
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