平凡太~ヘイボンタ~の恋
「オイ、平凡太」


「小野寺主任」


「ちょっと来い」


先を歩く小野寺主任は、屋上へ上がる階段の踊り場で足を止めた。


「いつからだよ?」


「主任にお教えする程の事じゃありません」


「オレはずっと一華ちゃんの事が好きだった。聞く権利はあるね」


「だったら気づいてたんじゃないですか?一華がボクを見る目」


間違ってない。


一華先輩は、ボクの…いや『友詞』の影を見ていたんだから。


「…クッ。オマエ、どの面さげて一華ちゃんと…!平凡太のくせにッ」


「プライベートな事なんで、勘弁してください。仕事中なので」


「テメェ…!」


───グッ!


胸ぐらを掴まれる。


殴られる覚悟ならできていた。


一華先輩の過去を背負う覚悟、『友詞』になる覚悟。


だからこれしきの事で揺らいだりはしない。


一華先輩は。


『友詞』としてのボクのモノ。
< 38 / 164 >

この作品をシェア

pagetop