平凡太~ヘイボンタ~の恋
「オマエなんかに幸せにできんのかよ?」


「ボク以外にナイです」


「信じていいんだな?」


「ボクが一華の全てで、一華がボクの全てです」


「…はぁ」


小野寺主任は掴んだボクの胸にあった手をおろした。


「完敗、か。平凡太のその言葉にかけるよ。ただし、ちょっとでも隙があったら容赦しねぇからな?」


「ナイです」


「ハハッ。まさかなー、平凡太にかっさわれるとは思わなかったよ。大穴ってヤツだな」


「万馬券で札束ザクザクです」


「でも気をつけろよ。一華ちゃん狙いなんてこの会社にごっちゃりいる。噂や嫌がらせくらいの心構え、持っとけ」


「ハイ」


「あーあ。なんか気分乗らねぇ。三十路男の失恋て、こたえるよなー」


そう言いながら、小野寺主任は階段を駆け下りて行った。


見かけも体育系なら、脳ミソまで筋肉マンで良かった。


覚悟はあっても殴られるのは本意じゃない。


「ふぅ…」


小さく息をつき、仕事に戻った。
< 39 / 164 >

この作品をシェア

pagetop