平凡太~ヘイボンタ~の恋
「どんな事情かなんて、そんな理由、栞はいらないの。平太先輩が欲しいだけ。いいですよねぇ?一華先輩?」


「平太くんが…望むモノを選んでいいと思う…」


「一華先輩…?」


「あたし、帰らなきゃ。平太くん、また明日、ね?」


「一華先輩ッ!」


走り去って行く一華先輩を追おうとするのに、辻野さんはボクの手をつかんで離さなかった。


「フフッ…。逃げちゃったぁ」


「辻野さん、どういうつもり?」


「栞って呼んで?」


「ボクは一華先輩といなきゃならない」


「栞って呼んで」


「ボクが好きなのは…!」


「栞って呼んでっ!じゃなきゃ、みんなバラしちゃうからっ!!」


「はぁ…。あのさ、栞ちゃん」


「栞」


「…わかったよ。栞、ボクは君に気持ちはあげられないんだ」


「なぜ?一華先輩は放棄したのに?」


「わかってるだろ?ボクが好きなのは…」


「栞になるでしょ?」


くだらない押し問答に吐き気すら覚える。


話し合ったところで無駄に違いない。


ボクは栞の手をふりほどき、駅へ足を向けた。
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