平凡太~ヘイボンタ~の恋
“平凡太”(ヘイボンタ)


これがボクの愛称。


どこにでもいる眼鏡男子、佐藤 平太(サトウ ヘイタ)“平凡太”。


あまりの取り柄のなさに、みんなボクをそう呼ぶ。


ありふれた名字、身長はちょっと高めだけど平均体重、仕事をこなす量も平均並み。


趣味、特技ナシ、英検、漢検も並、パソコンはちょっと得意かな、って思うけど、そんなのこなせる奴は現代人ならザラ。


だから平凡なボクは“平凡太”。


「お砂糖もミルクもナシ、だったよね?」


「ハイ、ありがとうございます」


プラのコーヒーカップを受け取る時にちょっとだけ触れる指先に、胸が高鳴る。


誰にでも見せるこの仕草が。


ボクだけのモノにならないかな…と思う欲が出てきたのは、入社したちょうど1年前の事だ。
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