平凡太~ヘイボンタ~の恋
「一華先輩…!」


「平太くん…っ!」


震える一華先輩の肩を抱く。


「今日は法事で詞音を両親に預けられなかったの!…っ…っ…保育園に迎えに行ったらちょっと熱っぽいな、って。家に着いた途端、詞音が…!どうしよう、平太くん…!あたし…っ…っ…あたし…っ!」


「大丈夫。一華先輩、大丈夫だから」


何が大丈夫かなんてわからなかった。


でも泣いて取り乱す一華先輩を繋ぎ止めたくて、ただそれだけだった。


「詩音…!」


立ち尽くしたまま取り乱す一華先輩の震える肩を抱く。


何かしたいのに、何か言葉をかけたいのに見つからない。


もどかしく、何もできない自分に腹が立つ。


ただ時間だけが過ぎていく。


祈るしかなかった。


詞音ちゃんの…一華先輩と『友詞』の小さな命、詞音ちゃんの無事を。
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