平凡太~ヘイボンタ~の恋
「平太く…」


「『友詞』」


「あ…えっと…友詞。ありがとう。あたしすっかり取り乱しちゃって…」


「いいさ、一華。ボクを呼んでくれた事が嬉しいよ」


「ねぇ、パパー?」


「なんだい?詞音」


「しおんのお熱が治ったら、またパパは天国へ行っちゃうのー?」


「詞音…」


「だったらしおん、お熱治さない。ママがまた泣いちゃうもん。お熱が治らなかったらパパはママと一緒なんでしょう?」


ボクはベッドの上の詞音ちゃんに合わせてかがみ、小さな手を取った。


「パパはずぅーっと詞音とママと一緒だよ?」


「ホント?」


「あぁ。天国には詞音もママもいないから、つまんないんだ」


「やったぁ!パパが帰って来たって、おじいちゃんとおばあちゃんも喜ぶねっ。あれぇ、ママ、どうして泣いてるのー?」


「…っ…っ…。詞音…パパはね、友詞は…」


「一華」


一華先輩の言葉を遮り、頬をつたう涙を拭った。


「言ったでしょう?一華先輩のためなら『友詞』でかまわない、って」


耳元で囁くと、一華先輩は儚い花のように笑った。


「ありがとう…。『友詞』」
< 56 / 164 >

この作品をシェア

pagetop