平凡太~ヘイボンタ~の恋
一華先輩は深い眠りについた詞音ちゃんのおでこに触れ、心底安心したように息をつくと、ボクを廊下へ誘った。


「平太くん…」


「今晩は一緒にいさせてください」


「でも…」


「約束したから。パパはここにいる、って」


「うん…。ねぇ、平太くん…?」


「ハイ?」


「ありがとう」


「いえ。ボク、何もできなくて。なんか情けなくてスイマセン。きっと友詞さん、こんな代理パパ、失格だって怒るでしょうね」


「ううん。あたし、ね。怖かったの」


「怖い…?」


「痙攣起こしてる詞音をどうしたらいいのかわからなくなって。あぁ、このままじゃ詞音の命まで持って逝かれてしまう、って。とても怖くて…。気づいたら平太くんのケータイ鳴らしてたの」


「ハイ」


「冷静でなんていられなくって。バカなママよね。苦しむ詞音見てたら救急車の番号すら思い浮かばなかったの。落ち着いて、って。平太くんが言ってくれて良かった」
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