平凡太~ヘイボンタ~の恋
───トン


デスクに置かれたのは、湯気の立ったコーヒー。


「…?」


「食べなきゃもたない、よ?」


見上げると、隣には花を咲かせたように柔らかく笑う先輩がいた。


「あたし、桜庭 一華。隣、あたしのデスクなの。よろしく、ね?」


「あ…」


「ん?」


「いえ…。ありがとう…ございます」


あまりの可愛らしさに、絞り出すように口から吐かれた言葉はかすれてしまって。


「ありがと、です」


もう一度お礼を繰り返すと、先輩は再び笑みをこぼしてボクの隣に座った。
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