平凡太~ヘイボンタ~の恋
恋や愛に。


“あげてる”なんて言葉は、違う。


そんな思い上がりで人を、人の心を想うなんて。


違う。


「栞、キミはボクの事、好きじゃないだろ?」


「好きッ!大好きッ!!栞は平太先輩が大好きなのッ」


「栞の気持ちは違う。なぁ、栞、そんな苦しさ、もう捨てろよ」


「誰が苦しめてるの!?みんなみんな平太先輩のせいじゃないッ!早く栞を解放してよッ!何でもしてあげるから、栞が傍にいてあげるから、平太先輩の全部をちょうだいっ!!」


興奮した栞にボクの言葉なんて届くはずもなく。


栞は泣き叫んでテーブルの上のオムライスを床に撒き散らした。


「栞、もう終わりにしよう」


「きっと奪ってやるからッ。一華先輩の全部奪ってやるからッ!!」


捨てゼリフとも取れる栞の言葉を背中で聞いて、ボクはアパートを出た。
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